はじめに
情報システム部の方で、ITに詳しいだろうからという理由で、ビジネス用のシステム開発のマネージメントをするように依頼されることはないでしょうか?
実際は情報システム部の仕事と、ビジネス用システムの開発は大きく異なるものかと思います。
また、非IT企業では、システム開発を依頼する機会も少なく、一発勝負になることも多いです。
そんなお悩みを解決できるよう、いち非IT企業の情報システム部メンバーとして、実体験に基づくシステム開発の依頼の流れをまとめさせていただきました。
システム開発でお悩みの方は、是非見てみてください!
またITベンダーの皆さんにも企業側はこんなこと考えてるんだなーと思ってみていただければ嬉しいです。
点取り表とは
RFPを用いたベンダー選定を最終的に決定するために用いられるものである。評価項目と点数を入力し合算することで、各ベンダーの点数を作成し、意思決定のために利用する。ポイントとしては以下。
- 客観的なベンダー選定を行えるように作成する。
- 公正な選定を行うため、ベンダー提案受領前に作成する。(RFP作成完了と同時に完了するのが望ましい)
- 点取り表が劣っていたとしても理由により逆転させることがある。
※提案は良いが実現性に疑問が残るなど - 点取り表の内容をRFPにフィードバックし、RFPを読んで回答がもらえるようになっていることを確認する。
点取り表の項目
前提として、評価したい内容をもとに作成し、重みづけを行うものである。評価項目及び、評価の重みは関係者と必ず事前に認識合わせを行う。
基本的な観点
- Q(品質): 提案システム・ドキュメントなどから品質面を評価
- C(コスト):想定コストなどからコスト面を評価
- D(デリバリー):スケジュール・管理体制などからデリバリー面を評価
- その他:その他確認したいポイント。会社規模など
※個人情報を管理するシステムであれば、プライバシーマークの有無など
コスト概算見積もり
システム開発を依頼する際に(おそらく)最もビジネス側と決裁者が気にするのが金額である。しかし、非IT企業にとっては、見積の妥当性を判断することが非常に難しい。できるだけ客観的に判断するために各種見積手法を利用することが好ましい。
ファンクションスケール(FS)法
ソフトウェア機能規模計測法「FS(ファンクションスケール)法」
https://www.fujitsu.com/jp/Images/fs-introduction-doc-v1-1.pdf
富士通社のソフトウェア規模尺度を算出する方法である。
詳細はPDFを参照いただきたいが、画面やバッチに対するFS値の情報が記載されている。
PJTにて作成予定のシステムの画面イメージ・バッチ処理のイメージを作成し、それに対して機械的にFS値を積算していくことにより、FS値として見積り工数を作成することが可能である。
![](https://kukuru99ru.com/wp-content/uploads/2022/08/image-10.png)
FS単位は、最終的に人月に換算する必要がある。換算値については記載されていないが、経験上1人月 = 900 ~ 1,000 FPSであるとして計算すればよい。
また、FS法にて算出されるのは、詳細設計~単体試験の部分である。したがって、ベンダーの分担範囲に応じて、さらに工数を追加して見積る必要がある。
![](https://kukuru99ru.com/wp-content/uploads/2022/08/image-2-1024x372.png)
各工程の工数については、IPAが作成しているソフトウェア開発分析データ集を参照するのが良い。
※毎年更新されるので、その時の最新を見るのが良い。
![](https://kukuru99ru.com/wp-content/uploads/cocoon-resources/blog-card-cache/704e47faaad817816c054e22c2e7aafa.png)
![](https://kukuru99ru.com/wp-content/uploads/2022/08/image-11.png)
上記IPA指標の各種指標をまとめると工数割合は下記の通りになる。
工程 | 工数割合(IPA) |
要件定義 | 8 |
基本設計 | 14 |
詳細設計 | 16 |
開発・単体試験 | 32 |
結合試験 | 18 |
総合試験 | 14 |
受入試験 | 8 |
運用試験・準備 | 16 |
リリース | 4 |
合計 | 130 |
黄背景(74): 赤背景(66)の工数が、約1:1となっていることがわかる。
そして、FS法で見積できるのは、赤背景の部分である。
したがってFS見積の結果に、自社とベンダーの役割分担を加味し、以下を乗算すればよい。
- ベンダーが全範囲を担当する場合 : 2.0倍
- ベンダーと共同で担当する場合 : 1.5倍
- 自社が全範囲を担当する場合 : 1.0倍
計算例
[計算条件]
- FS値が合計20,000であるとする。
- 1人月 = 1,000 FPSと仮定する
- 今回はベンダー側と共同で、黄部分(要件定義等)を実施するとする。
- ベンダーの単価は1人月=150万円とする。
[計算結果]
- FS値:20,000
- 詳細設計⇒単体試験工数: 20人月 (20,000FSP /1,000)
- 総工数: 30人月 (20人月×1.5倍)
- 見積金額: 4,500万円 (30人月×150万円)
このように概算見積を行い、その金額をベースとして、金額評価を行うとよい。
この結果と大きくずれが発生する場合は、ベンダー要求認識の齟齬が発生している可能性があるため、詳細なすり合わせを行う必要がある。
※安いから良いというわけでもない。
また、実際に予算などを取る際は、これに予備費を上乗せしておくべきである。開発中の仕様変更はどうしても発生するため、その時に使える費用というのは安心材料としても重要である。
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